読書日記。『資本主義の終焉と歴史の危機』

「ようこそのお運びで。厚く御礼申し上げます。」

今日も朝から寒い一日です。

寒い冬こそ、代謝が上がる（らしい）運動をして、減量に勤しんでおります。

これも、正月の食べ過ぎた分…。

食べ過ぎなければいいのですがね。「せっかく」という気持ちもあり・・・。

さて。

今年初。

読書日記。
水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』（集英社新書）。

f:id:yoshida-nariaki:20150110153642j:plain

久々に付箋をたくさん、貼りました。

去年の12月の「本のまとめ買い」の時に買った時の一冊です。

ちと、帯がちがっています。

手元にあるのは、2014年10月発行で、第１１刷。

新書としては、かなりの重版ではないでしょうか。

各新聞や書評サイトなどでも取り上げられ、自分も「読みたい本」の一冊に入れていました。

で、ようやく。

まあ、「いまごろ」感もありますが。

さて、内容について。

経済（学）について、ほとんど無知ですが、非常に読みやすかったです。

「日本の長期金利の低下」と資本主義そのものが抱える構造上の問題（利益を上げるために「周辺」を無理矢理作る・その繰り返し）を述べ、１６世紀ヨーロッパで起こった「革命」と比較しながら、筆者の論を展開しています。

現在の日本経済の問題、あるいは、書名にもあるように「資本主義の終焉」。

資本主義の末期状態といっていいでしょうか。

個人的には、概ね筆者の主張には肯けました。

ただ、同じ内容の論理の展開が繰り返されるので、少し冗長すぎるかな、とも感じました。

あと、あるいは、支持政党によってこの本の評価は変わってくるような気がします。
（ちょこっとレビューを読むと、そんな感じがしました）

個人的な疑問。

まず、「資本主義の終焉」とあるが、では、次に「どのような社会モデルがいいのか」という提示がないこと。

ミヒャエル・エンデの言葉からの引用で「必要な物が必要なときに、必要な場所で手に入る」ということは、理想的です。

しかし、現実的には、難しいでしょう。

個人レベルでは、可能でしょうが、国家のモデルとしては可能かどうか、と。

「より速くへ、より遠くへ、より合理的に」という資本主義、（あるいは新自由主義）の強迫観念のような利潤追求からの脱却というのは、必要でしょう。
筆者の述べるように、「よりゆっくりへ、より近くへ、より曖昧に」というのもわかります。

ただ、「その後」のモデルが提示されていないのが少し残念です。

本書の目的が「資本主義が終焉を迎えていること」、「日本経済が危機的状況に陥っていること」を指摘するだけの目的・主旨で書かれたのであれば、納得です。

あと、ひとつ。
筆者の執筆時点では、１ドル１１０円前後の時だったでしょうか。

しかし、現在は、油価格が、１ドル５０円前後という状態。（ひょっとするとさらに価格が下落するかもしれない）

これは、あずかり知らぬことで、どうしようもないことですが…。

急激な原油価格の下落と、（安倍政権の経済政策による）急激な円安の２０１４年年末〜２０１５年の現在。

これを勘案した場合の「資本主義の終焉」、「日本経済の危機的状況」がどうなるのか知りたいところではあります。

原油価格の下落と、急激な円安になっても、日本経済の危機的状況には変わりないと思うのですが…。

日系平均株価は騰がっていますが、それは、国民年金による買い支えが主で、海外からの投資家の投資額が大幅に減少しています。

株価が騰がっても、実体経済と見合っていない。

そして、筆者がのべる「長期金利の低下」は相変わらずの状態ですし…。

ともかく、経済について、よくわからない自分でも、本書の内容は理解できました。

矛盾した表現ですが。

それだけ、わかりやすく書いている（それが「新書」の役割かな）ためでしょう。

個人的には、良書だと思いました。
（時代が変われば、評価は変わるでしょう。時事問題を扱っているので）

読んでいない方がいらっしゃれば、ぜひ、読んでください。

筆者の主張に、首肯するもよし、あるいは、真っ向から否定的見解から読むも良し、です。

後者の読み方で読めば、大学生のレポート、あるいは、高校生の課題、あるいは、小論文対策にも適しているのではないでしょうか。

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)