読書日記。『彼らは廃馬を撃つ』
「ようこそのお運びで。厚く御礼申し上げます。」
朝・晩は涼しいですが、まだ日中は日差しがまぶしく汗ばむこともある日々です。
さて。
読書日記。
読了。
ホレス・マッコイ『彼らは廃馬を撃つ』。
かなり前に読んでいました。
まだ、真夏の真っ盛りの時、です。
今頃。です。
どこから書き始めたらいいのか。
読み終わってからだいぶ経つというのに、まだ読了した時の余韻が、時々蘇ります。
『彼らは廃馬を撃つ』。
かなり不思議なタイトルです。
原著のタイトルは『They Shoot Horses, Don't They? 』。
まず、ページを開き、1ページ目で「?」となります。
そして、読み進めていくごとに、各章に挟まれる「短い文」(ここではそう表現しておきましょう)も進んでいき、そして、主人公の男性の一人称視点で、物語が進み、物語の結末を迎えます。
「ダンス・マラソン」というのが話の中心。
「ダンス・マラソン」というのは、男女一組のペアになり、「最後の一組になるまで」食事、睡眠、休憩の時以外は、ただひたすら「踊り続ける」というもの。
優勝したダンスペアには、大金が渡される…。
一攫千金を夢見て、若い男女が参加する。
一日でなく、何週間も踊り続けるという、現実にあったとは思えないような競技。
しかし、「あとがき」によると、今から80年前のアメリカの各地で行われていたという。
「あとがき」から引用。
1923年のニューヨーク・ワールド紙は、「これまで行われた馬鹿げたコンテストのなかでも、ダンス・マラソンほど馬鹿げたものはない」と評したそうだ。
中には、なんと190日(!)も続いたものもあったという…。
「マラソン・ダンス」が全米で流行した80年前は、大恐慌時代。
その少し前は、好景気で人々は人生を謳歌していた。
そして、それを打ち消してしまう、大恐慌。
そういうこともあり、人々の中には、どこにも行き着くことのない気持ちがあったのだろう。
そして、ただ「最後まで踊り続ければ」一攫千金のチャンスがある。
人間の欲望と狂気が渦巻く。
物語もそのような時代の雰囲気が伝わってきました。
(個人的には)
不況の中で、ハリウッドの仕事からあぶれた男女が主人公。
(物語は、男性の一人称視点ですが)
「ハリウッドが背景にある」ということも物語のポイントになるかもしれません。
物語の大半を占める「マラソン・ダンス」の独特の緊張感にも引き込まれました。
「マラソン・ダンス」を見に来る観客も、ある種の熱にうかされたような感じ。
途中に出てくる貴婦人も重要な登場人物になります。
主人公の男女は、たまたまバスの停留所(だったかな)で知り合った二人。
そして、その後、待ち受ける運命…。
『彼らは廃馬を撃つ』の「マラソン・ダンス」のルールは、「1時間50分踊り続け、10分の休憩のみ」。
10分の休憩の時に食事や睡眠をするというもの。
まさに狂気…。
ネタバレになってしまうかもしれませんが。
とにかく、女性の言葉が印象的で。
「わたしはこの回転木馬からおりるわ。こんな鼻もちならないことと縁を切るわ」
それに対して男性は。
「なぜ君は自分で助けようと努力しようとしないんだ?」
と諭しますが。
少し前後しますが、女性の言葉。
「いつも明日ね。大きなチャンスがいつも明日やってくる」
「わたしは生きることに飽きて、死ぬことがこわいのよ」
彼女の言葉の端々から厭世観がでてきます。
そして、何よりも、この一節。
「これでもって、神さまのピンチヒッターに立ってちょうだい」
これ以上の言葉はない。
「神さまのピンチヒッター」。
「ひとりぼっちの青春」と題名で映画化されました。
(自分は知りませんでした。そして、廃盤になっているようで観るチャンスが…)
作者のホレス・マッコイの略歴も書かれていますが、ほとんど無名の作家で、出版された本も少なく、この『彼らは廃馬を撃つ』がデビュー作にして、代表作になるのでしょうか。
発表当時は、ほぼ黙殺されたようで、フランスで人気になり、それがアメリカに伝わり…、という、そのこともまた、数奇な運命というか。
日本語訳された『They Shoot Horses, Don't They? 』、つまり『彼らは廃馬を撃つ』。
自分が買ったのは、今年2015年に常盤新平氏の翻訳で白水社さんから出版されたものです。
最後の法に簡単な紹介があります。
「本書は、1970年に角川文庫、1988年に王国社から刊行されたホレス・マッコイ『彼らは廃馬を撃つ』(常盤新平訳)の復刊です。」
そう、かなり前に刊行され、絶版になり、刊行され、絶版になり、また復刊された本なのです。
ある意味、根強い人気があるのでしょうか。
この作品に「何かひきつけるもの」があるのでしょうか。
白水社さんの『彼らは廃馬を撃つ』は、王国社から刊行された時の常盤新平氏の翻訳のまま。
30年前の翻訳でも新鮮さがあります。
角川文庫から発刊された時の翻訳者の後書きも収録されているので、それも読み応えがあります。
人間の希望、欲望、狂気、不安、失望、熱気、いろいろなものがない交ぜになった物語です。
しかし、作者はそれほど心理描写を描いていません。
見事です。
読後感は、なんとも言えないものでした。
華やかさの下に広がる、もっと奥深いところにある儚さと切ない感情。
「神様のピンチヒッター」。
名言です。
機会があれば、少なくとも、この部分の原文をしりたいです。
読後感の倦怠感を味わいたい人にお薦めです。
いや、もっと多くの人に読んで欲しい。
絶版になっては刊行されるほどの、名作なのだから。
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