読書日記。『西欧の東』
「ようこそのお運びで。厚く御礼申し上げます。」
暑い日が、ここ数日続きます。
各地で大雨の被害。
毎年のように。
インフラの整備・維持と、日本人口の減少。
人的被害ももちろん心配で、これ以上被害の拡大にならないことを祈るばかりです。
さて。
読書日記。
読了。
ミロスラフ・ペンコフ『西欧の東』(白水社)
翻訳:藤井光
白水社から出版されている”エクス・リブリス”シリーズですね。
良質な海外文学の翻訳を出版しているイメージです。
ここ最近、長篇小説を読む時間も、体力もなく、短篇小説ばかり読むようになってしまいました。
また、腰を据えて、じっくり長篇小説を読みたいです。
さて、本書『西欧の東』。
ブルガリア人の作家。
アメリカ在住の作家らしいですが、基本的に、ブルガリアが舞台になっています。
初めてのブルガリア文学。
八つの短篇。
「マケドニア」
「西欧の東」
「レーニン買います」
「手紙」
「ユキとの写真」
「十字架泥棒」
「夜の地平線」
「デヴシルメ」
その作品の背景もブルガリアの歴史・文化も色濃く反映されています。
自分は、それに疎い部分もあり、ちょっとわかりにくい部分もありましたが、それでも、興味深く読めました、
作品が持つ力もあるでしょうが、藤井光さんの翻訳の力も大きいでしょう。
ブルガリアの歴史や文化など背景を知っていれば、もっと楽しめたはず。
そこが悔しい。
それでも、幻想的なものや、切ない物語など、多種多様で面白かったです。
「西欧の東」、「ユキとの写真」がお気に入り。
「レーニン買います」「手紙」などは、少し時間をかけて、もっと味わいたいところ。
西欧と共産主義の狭間で揺れる感情、多種多様な人種・文化が入り交じった中で繰り広げられる日常。
日本ではなかなか得がたい感情ばかり。
その影響もあるのでしょうか、遠く離れた母国、故郷のことを思う、深い悲しみが、個々の短篇に表れているようにも感じます。
深く悲しみのある、でも、どこか幻想的な世界も広がる、不思議な短篇集でした。
おすすめの一冊です。