なりあき YEAR BOOK

人を愛する者、人恒に之を愛す。人を敬する者、人恒に之を敬す。

読書日記。『雪の花』

「ようこそのお運びで。厚く御礼申し上げます。」

 

暑い。

 

暑いですね…。

 

なんとかこの暑さを乗り切っています。

 

読書日記。

 

読了。

 

吉村昭『雪の花』(新潮文庫Kindle

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江戸時代末期、福井藩。 

 

私財をなげうち、天然痘の予防接種に尽力した医師の話。 

 

医師に立ちはだかる数々の苦難。

 

一つ山を越えても、また、これでもかというくらいに襲ってくる。

 

いかに予防接種(種痘)が大事であるかを医師がわかっていても、天然痘に対する恐怖があり、接種を怖がる市民の姿。

 

鎖国下の日本において、西洋から持ち込まれた最先端の種痘(予防接種)と痘苗(ワクチン)に対する、偏見や不理解。

 

さらには、同業の医者からの出世に絡んだ妬みまでも。

 

そのため、なかなか一般人に受け入れられることはなく、種痘に奔走する主人公に対して、町の人は蔑み、石まで投げつける有り様。

 

最後には、いろいろな助力があって、人々を天然痘の恐怖から救うのだが…。

 

昨今のコロナ情勢と照らし合わせて読むと、当時も今も重なって見えることがある。

 

原点の部分は同じというか。

 

時に怠慢で、責任放棄、責任転嫁するような役人。

 

同僚の医師たちの醜さ。

 

未知なるもに対して、翻弄される一般市民。

 

感染症が繰り返されると、同じようなことが繰り返されるのは、いつの時代でも同じか。

 

とにかく、江戸時代末期、一人の町医者が私財をなげうち、種痘の奔走し、人々から天然痘から救った話。

 

この医業を成し遂げた笠原良策に敬意を表したい。

 

当時、主流であった漢方医から、オランダの医療を率先して学んだ、その勉学にいそしむ姿にも感動です。

 

 

 

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