なりあき YEAR BOOK

人を愛する者、人恒に之を愛す。人を敬する者、人恒に之を敬す。

「ようこそのお運びで。厚く御礼申し上げます。」

 

暑い。

 

梅雨明けしたのか、していないのか。

 

そして、相変わらず、首都圏、大阪で、新型コロナウイルスの新規感染者数が増加。

 

ぶり返している。

 

自分のことですが。

 

昨日、ワクチン接種、2回目、無事終了しました。

 

やっぱり注射した部位が痛い。

 

それくらいの副反応で済んでよかった。

 

さてさて。

 

毎日の電車の中、あるいは、ワクチン接種会場で、コツコツ、ゆっくり読んだ本。

 

読み終えました。

 

読書日記。

 

読了。

吉村昭『赤い人』(講談社文庫・Kindle

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う〜ん、Kindleのカバーがかなり傷んでいる…。

 

結構前のモデルなので、これにあうカバーはあるのだろうか。

 

現行モデルのカバーを装着できるのだろうか。

 

話が逸れた。

 

吉村昭『赤い人』。

 

未読だと思って、読み進めていたら、実は数年前に読了していたことが発覚。

 

ブクログでわかった。

 

でも、ある意味、ほとんど記憶がなかった(おい)ので、初読に近い感覚で読めた。

 

不思議なことに、読後感は、ほぼ一緒だった。

 

”北海道開拓史の暗部”。

 

同じ言葉が出てきた。

 

では、再読の感想を。

 

再読。

 

北海道開拓史の暗部。

 

そこには苛烈を極める囚人たちの”労働力”があった。

労働環境もひどく、病気の治療もままならない。

むしろ、当時の官僚などの言葉からは、人権など無視した発言、”過酷な労働によって改心する”というよくわからない心理で、囚人たちを扱っていた。

 

確かに、囚人たちは、極悪非道の者たち、脱獄を繰り返す者たちもいたが、それでも、人権無視も甚だしい。しかし、これは現代からの視点で、当時としては”当たり前”だったのだろうか…。

 

囚人を見張る看守たちも薄給で、仮に脱獄者が出れば減俸などの重い処分。生活もままならない。

 

自然と、看守と囚人との敵対関係も生まれてくる。その悪循環だった。

 

北海道開拓と囚人の労働状況を中心に、有名な脱獄犯のエピソードなども挟んでいる。

 

吉村氏の綿密な文献の読み込み、聞き取り取材の賜だろう。

 

 

 

ほんとうに、今では信じられないくらいの、人権を無視した囚人の強制労働。

 

工賃などもほとんどなく、労働環境もひどすぎる。

 

食事も粗末で、冬になれば、毛布もなく、靴下もない。

 

かなりの割合で病死している。

 

あえて引用文を書きませんが、当時の役人の囚人に対する考え方は、本当にひどかった。

 

いくら重罪を犯した者でも、とんでもない理屈で労働させるという…。

 

看守も労働者ですが、赴任が決まった時、どんな気持ちだったんだろう。

 

北海道での監舎での暮らしを、噂では聞いているはず。

 

相当厳しいものだ、と。

 

時々出てくる脱獄犯の挿話。

 

けっこう、頻繁に出てくるので、それだけを観ても面白いかも。

明治期とはいえ、もう少し厳しい監視体制でないのか、いとも簡単に脱獄されている印象。

北海道の各地の監獄だけでなく、日本のあちこちでそれなりに脱獄騒動があったのも驚きです。

 

 

北海道開拓史の暗部、というか、日本の暗部というか、そういうものを、まざまざと見せつけられた想いです。


また。数年後に読み返しているかも知れない。

 

 

 

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