読書日記。『物語 ウクライナの歴史』
「ようこそのお運びで。厚く御礼申し上げます。」
久しぶりのブログ更新。
この間、本を数冊読み終えたり、いろんな音楽を聴いたりしていました。
音楽方面では、相変わらず、好きなクラシック音楽(主に室内楽)を聴いていました。
心が落ち着く。
あと、NHKラジオで早朝流れていた音楽。
たまたまつけていた。
そこから流れていた、「ブルガリア民謡」。
すっかり気に入りました。
毎朝、ブルガリア民謡をSpotifyで流しながら、身支度する毎日。
不思議な音色と音階。
さて。
読書日記。
読了。
黒川祐次『物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国』(中公新書)
ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、この本が取り上げられていたので、自分も。
本書に出てくる、ウクライナの都市名。
毎日報道される、変わり果てた映像としての街の名前が出てくるので、名状し難い心情です。
本書は、紀元前から現代までのウクライナという国の成り立ち、というか、歴史を、概説しています。
大国に挟まれていること、古代から、色々な民族によって征服され、入れ替わり立ち替わりしてきたことがわかります。
中世ヨーロッパ最大の版図を誇ったキエフ・ルーシ公国。
有名なコサックの活躍。
馴染みのない人名や地名が出てきますが、なんとか読み進めました。
現代に近づくにつれ、世界史で学習したこともあり、わかりやすくなってきました。
しかし、結局ボリシェヴィキに圧倒されてソ連に組み込まれてしまう。
古代から中世まで、ウクライナが辿った運命は数奇で過酷な運命でしたが、ここからが…。
スターリンによる、強引な農業集団化と穀物調達により、300万~600万人の餓死者が出たという歴史。
事実が明らかになったので、専門家もごく最近になって知ったとか。
もちろん、その実態は、闇の中。
この意図された飢饉は、ホロドモールと呼ばれます。
参考1
歴史的大飢饉「ホロドモール」はなぜ起きたのか 隠蔽されていた歴史
参考2
人間が生み出しだ悲劇としか言いようがありません。
さて、現在のウクライナは、1991年8月24日のウクライナ最高会議の独立宣言にならって、多くの共和国が独立宣言をしたことによりソ連は事実上解体したとのこと。
ただし、筆者曰く、この独立は幸運というべきか、「棚ぼた」的というか、名実揃わない、看板だけ替わって中身はほとんど変わらない独立状態らしいです。
現在のウクライナは、2014年のクリミア半島のロシア併合、東部のロシア系住民によるロシア編入運動と前途多難です。
そして、今回のロシアによる軍事侵略戦争。
一刻も早く、終戦を願うばかりです。
ウクライナは人口5000万人を有する大国。イギリス、フランス、ドイツには及ばないものの、スペインやイタリアと肩を並べる人口。
そして、何よりも、広大で肥沃な穀倉地帯を抱える農業大国。
まさに、「ヨーロッパの穀倉」と呼ぶにふさわしい。
さらには、鉄鉱石にも恵まれ、工業・科学技術面においては、かつてはソ連最大の工業地帯であり、今も立派な工業地帯。
本書に触れられていませんでしたが、ロシアの宇宙産業を支えてもいます。
ウクライナは、大国になる潜在力がある。
興味深かったのは、支配され、抑圧され続けていた国から数多くの著名人を輩出していること。
演奏家では、ホロヴィッツ、リヒテル、ギレリス、スターン。オイストラフなど他多数。
もちろん政治家やスポーツ選手もいますが、ここでは割愛。
上記で述べた、飢饉の時代では、ゴルバチョフの祖父もいたとか。
あと、ソ連時代にウクライナ人が極東に移住させられ、数多くの子孫がいること。
日本では、意外に近いところに、ウクライナ人の子孫の方々いることになります。
様々な困難を乗り越えてなお存続するウクライナのナショナリズムとは何か。
古代から民族同士の衝突に幾度となく巻き込まれてきたにも関わらず、この地に脈々と受け継がれ続けるウクライナのナショナリズムに関する考察には、考えさせらるものがありました。
農業大国でもあり、工業大国でもあるウクライナ。
そのウクライナに早く平和が訪れることを願うばかりです。